ハリネズミに多い病気
ハリネズミは本来、とても丈夫な生き物で、間違った飼育をしない限り病気にはなりにくい動物です。栄養のバランスが乱れた食餌、過度のストレス・運動不足、夏眠冬眠等を続ける事により、病気になりやすくなります。つまり、これらを防ぐことが疾病予防に繋がります。日頃の健康管理をしっかりし、なにか異変を感じたら、すぐ動物病院で診てもらいましょう。
ダニ症
ハリネズミに非常に多くみられる皮膚の病気が疥癬(かいせん)ダニによるダニ症です。
原因
疥癬ダニの寄生を受けているハリネズミと直接接触したり、床材やタオルなどを介して感染します。ハリネズミは疥癬ダニの規制を受けている可能性が高いので、ハリネズミを迎え入れる際、一度動物病院で診察してもらった方か良いでしょう。
症状
針の付け根の皮膚や目の周囲によく起こります。針の付け根にかさぶたのようにフケがみられる、脱毛、針が抜け落ちる、ま激しいかゆみがみられることがあります。症状が進むと、元気が無くなり、食欲が落ちます。
治療
駆虫剤の滴下で治療します。すでに産み落とされた虫卵には効果がないため、卵が孵った頃を見計らって(7~14日間)、3~5回繰り返すことで駆中していきます。治療と共に飼育施設や飼育グッズを流水で十分に洗浄、熱湯消毒(50度以上)し、床材を全て交換して、衛生的な環境をつくりましょう
予防
迎えた際に動物病院でチェックしてもらいましょう。また寄生しているかもしれない個体との接触を避けてください。
腫瘍
腫瘍は高齢になると発症しやすい病気の一つで、良性のものもありますが、約80%が悪性即ちガンと言われてます。
症状
しこりや腫れができるほか、体重が減る、食欲・元気がない、下痢、呼吸困難、腹水、子宮ガンでは生殖器の出血がみられます。口腔の扁平上皮ガンでは、歯肉が腫れたり、歯が抜ける、歯肉炎等がみられます。
原因
遺伝、環境、加齢が原因として考えられます。若いうちより年をとってからの方が発症しやすく、平均で3.5歳という報告がされています。
治療
腫瘍の種類・発生部位・進行の度合いや個体の全身状態などによって様々です。摘出手術・抗がん剤などによる化学療法を行う場合もあります。また、体の小さい生き物ですから体の負担に上記の治療はせずに、生活の質を高めることを優先する場合もあります。
先生とよく相談して決まるのがいいでしょう。
予防
ハリネズミに適した飼育環境を整えるとともに、、毎日の健康チェック、定期的な健康診断で早期発見を心がけてください。また、人間が食べるものを与えたり、添加物が多いフードを与えないようにしましょう。肥満にならないように注意したり、品質のよいヘルシーなフードを与え、適度な運動で予防してください。
歯周病
ハリネズミでは歯肉炎・歯周炎などの歯周病も一般的です。特に高齢になってくると起こりやすい病気です。また、歯周病は歯の周囲だけの病気ではありません。細菌は血流に乗って全身を巡り、肝臓や腎臓などの内臓疾患を引き起こすとも言われてます。
症状
口が臭い、歯の変色、歯肉が赤くなり腫れる、歯がぐらつく、歯が長くなったように見える(歯肉が退縮して)、歯が抜けるといった症状が見られます。口腔内に痛みがあるため固いフードを拒む、食事に時間がかかる、食欲が落ちる等もあります。また、唾液が増えたり、痛みや違和感から口元をしきりに気にする仕草をします。
原因
ものを食べると歯の表面に食べ物カスが付着し、これをエサにして増殖した細菌の塊を歯垢といいます。歯垢は時間が経つと固い歯石となって歯にこびりつき、歯と歯肉の隙間に入り込んで、炎症を起こし歯周病となります。
缶詰・ふやかしたフード等ばかりを与えられているハリネズミは歯石がつきやすい傾向があり、糖質の高い果物やフード(ドックフードのモイストタイプ等)、炭水化物の多い食餌(パン・クッキー)では虫歯を引き起こす原因にもなります。また偏った食事により、ビタミン・ミネラル不足による抵抗力の低下が原因で、歯肉炎等や口内炎が起きる場合もあります
また、ハリネズミは口腔内に雑菌が非常に多く、硬いフードのかけら等で口腔内を傷つけ、同様の症状が出る場合も多々あります。特に、ハリネズミ同士が喧嘩して噛むと相手が炎症をおこしやすいので注意してください。
治療
麻酔をかけ歯石の除去、抗生剤の投与などを行います。歯石除去を行っても、そのあとの歯の手入れを怠ればまた歯石がついてしまいます。また、進行によっては抜歯も行います。
予防
ドライタイプのフードのようにある程度固さのある食べ物、昆虫類のように繊維の多い食べ物は、かじる時に歯石をとる役割をしています。また、口腔内に垂らす液体歯磨き(犬猫用)を使ったり、かじって遊ぶおもちゃを与えると言う方法も良いでしょう。
アレルギー
ハリネズミは針葉樹にアレルギーがあり、広葉樹にはないと言われています。また、針葉樹の中でも杉や松は出やすくヒノキには出にくいようです。しかし、体に接する面積が大きく、口からカスを吸い込み易い床材の場合、広葉樹でもアレルギー反応が出る場合があります。
ハリネズミは木材に限らず食べ物にもアレルギー症状がでる子もいます。
症状
顔や脇の下にただれた様な湿疹ができます。
顔の周りにアレルギー症状が出たハリネズミ。
治療
原因物質を取り除くのが大前提になります。アレルギー性から細菌性等の肺炎を誘発させる場合がありますので、飼育環境の改善が必要です。
予防
床材は木からできた物を使用するのは控えましょう。ただし、巣箱の小屋にはそこまでに気を使う必要はありません。床がないタイプであれば体と接触することが少ないので針葉樹でできたものを使っても問題になることは少ないでしょう。
ハリネズミふらつき症候群(WHS)
ペットのハリネズミで問題になっている神経系の病気のひとつです。致死率が高く未だに詳しい原因・治療法が確立されてません。
症状
後ろ足に運動失調(思っているように体を動かせない)が起こってふらつくようになる、不全麻痺(四肢に力が上手く入らない・感覚が鈍くなる)、筋肉の委縮をともなう四肢の麻痺が起こり、悪化していきます。多くの場合、後ろ足から発症し、それから前足、全身に広がります。食事が思うようにとれないので痩せ、自力での排尿や排便が困難になる場合があります。
多くの場合、症状があらわれてから18~25ヵ月以内に死亡します。生きているうちに確定的な診断はできず、死後に病理解剖して詳しく検査すると、脊髄に障害があり、脳や末梢神経も影響を受けていることがわかります。
原因
何が原因なのか未だに良くわかっていません。原因として推測されているのは、栄養不良・ビタミン・カルシウムの不足(ビタミンB1欠乏)・ウィルス・細菌・中毒・外傷・過度のストレス(お産、転居)遺伝性ではないかということです。
治療
原因が特定されていないため、治療方法も確立されていません。私たちができることは、ハリネズミが最後の時を迎えるまで、良い環境で過ごさせてあげることです。
症状が進むと体を引きずるようになり、やがて寝たきりになります。やわらかく、衛生的な寝床を準備して下さい。寒い時期は暖かくしてあげてください。
食事は、自分で食器まで歩ける時は食べやすいよう工夫してください。ふらふらしないよう、タオルやクッション状のものを置いて体を支えるようにしても良いでしょう。症状が進むと自分でエサが食べられなくなるため、強制給餌が必要になります。シリンジ・スポイトでふやかしたエサを与えてください。
眠る時には体が傾かないように巻いたタオル・クッションを体の左右に置いたり、できるだけ自力で歩けるように体の幅程の段ボールで作ってあげるのも良いでしょう。
予防
とにかく生活・環境の質をあげることが最大の予防です。良く運動をさせ、ストレスを与えない環境を作る、ビタミン剤・カルシウム剤を添加する等が提唱されています。ビタミン剤・カルシウム剤を与えたい時は獣医師と相談の上、与えてください。また、原因に遺伝的要素があるので、発症した個体がいる場合は繁殖させないでください。また、WHSで死亡したハリネズミを解剖すると脱髄(神経繊維をつつむサヤが壊れるこ)がみられます。もし仮に、人間の脱髄性神経炎と同じだと想定するなら、風邪の感染を予防することが大切ということになります。
なお、ふらつきや麻痺のすべてがWHSとは限りません。低体温・外傷・低血糖・エネルギー不足・脊椎の損傷・脳腫瘍なども考えられます。「治らない病気だから仕方がない」とすぐに諦めず、病院で診察を受けてください。