慣らし方

慣らし方

慣らすことの意味

ハリネズミというと丸まって怒っているイメージが多いですが、人間に慣らすことはできます。慣れれば針を撫でることもできます。
しかし、慣れていないと小屋に手を入れる度に、丸まり威嚇したりと、ハリネズミにとって大変ストレスになり、快適に暮らすことができません。

ハリネズミが慣れていないと、日頃の健康チェックや体重測定ができなくなり、健康管理が難しくなります。
また、人慣れしていないハリネズミは動物病院に連れて行く必要ができたときなどの扱いが難しくなります。
専用の革手袋を使えば針が刺さらず丸まっていても持ち上げられますが、ハリネズミにとってはストレス以外の何物でもありません。

よく慣れたハリネズミの動画

慣らす時の心構え

個体差を理解する

ハリネズミにも個体差、性格の違いがあります。
なかなか巣箱から姿を見せてくれない臆病な子、すぐに慣れる人懐っこい子、人に構われるよりあちこちを探検するほうが好きな活発な子など、人と同じようにハリネズミにも色々な性格の子がいます。
どのハリネズミもすべてが同じように慣れると言う訳ではありません。
また、ショップ等の環境(騒音)・扱いが悪かった子は、大変神経質になっているので慣らすまで時間がかかります。
しかし、根気強く慣らすという行為をしていけば、改善する余地もあります。諦めず続けていくことが大切です。

飼い主の気持ちは伝わる

「ハリネズミは飼い主の気持ちを理解しいるのではないか」そう思うシーンを私は何度も経験してきました。
犬などを飼ったことをある人ならご理解いただけるのではないでしょうか?
触れ合うのに慣れていなくて犬に恐怖心があるような人が、おっかなびっくり頭を撫でようとしても、犬の方も同じく警戒してなかなか上手に触らせてもらえません。
逆に犬が大好きで犬を触ることに何の抵抗もなく、手や体を近づけられる人であれば、犬の方も心を開いて喜んでじゃれあってくれます。

ハリネズミでもこれと全く同じようなことが多々あります。
特にハリネズミには痛そうな針があります。慣れていない人はついつい針を恐れてしまいます。
ちょっとチクっとしただけでもビックリして急に手を引っ込めてしまいます。
ハリネズミはこの動作にビックリして余計に警戒する、という悪循環もしばしばあります。

そういう意味で、触るときは飼い主自身が安心して手を出せる範囲に限るべきです。針が怖い間は無理に抱き上げようとしてはいけません。まず、飼い主がハリネズミに慣れるべきなのです。

また、飼い主が無感情に作業をするかのような態度で接しているのであれば、このページや飼育書などに書いてある「慣らし方」通りに手順を踏んでも、何の効果もないでしょう。
慣らす努力をした、ということへの「見返り」に、ハリネズミが慣れるのではありません。慣れるということは、ハリネズミの信頼を得るということです。
慣らす以前に、ハリネズミが健康で快適な環境となるよう、出来るだけの努力をし、慣れていない状態でも可愛がってあげることが信頼への第一歩です。

お迎え直後の慣らし方

飼い始めは慎重に

ハリネズミにとって、飼い始めの時期は、環境が変わり特に神経質になっているので、無理に触ったり慣れさせようとはせず2・3日はそっとしておきましょう。
無理矢理触るのは、飼い主さんのにおい=嫌なこと関連付けられ、最悪の場合は飼い主のことがトラウマとなって、絶対に慣れない子になってしまうかもしれません。
必ず、ハリネズミが環境に慣れ落ち着いてきたら、慣らしはじめましょう。

飼い主の匂い=安心

ハリネズミはお迎えでのストレスを受け、新しい環境へ好奇心を持ったり警戒しています。
お迎えしてハリネズミを初めてケージに入れてあげると、好奇心旺盛に匂いを嗅ぎながらウロウロする子や、すっかり怒ってしまって動かない子が多いと思います。
どちらにしろ、この時、ハリネズミは普通、隠れ家となるものを第一に探します。第二に水や食べ物が得られる場所を探します。
怒って丸まっている子は人間などの気配がなくなると探し始めます。
隠れ家に適しているのは、暗くて狭い、四方を覆われた場所です。人間としては小屋に入って欲しいので、小屋以外の遊具(トンネルなど)は入れないでおきましょう。そうすれば必然的に小屋に入ります。小屋が新しい住処となります。
その小屋の中に飼い主の匂いがあるわけですから、飼い主の匂い=安心と覚えてくれるわけです。

つまり、その小屋の中に飼い主の匂いがしっかり付いている布切れ(Tシャツや下着の切れ端など)を入れておけばよいわけです。匂いが強いほど良いです。2、3日洗濯せずに着用したものがいいです。
必ず予め入れておいてください。ハリネズミをケージに入れた後に入れても、ハリネズミからすれば、外から知らない匂いのものが侵入してくるわけですから、警戒するだけです。飼い主の匂いを悪いものと覚えてしまいます。

また、予めエサと飲み水を入れておくことも重要です。できればエサは販売元で与えられていたものと同じものを使いましょう。
移動でのどが渇いている場合が多いです。ハリネズミは、隠れ家の確保をすませたら次はエサと飲み水を確保しようとします。エサや飲み水がない環境はよい環境ではありません。
ケージの中であればエサと飲み水が確保できるんだよ、安心してね。ということを伝えます。

気にかけることはストレス

ハリネズミをせっかくお迎えしたのですから、触りたかったり、様子をよく見たくなるのは当然だと思います。しかし、絶対にしてはいけません。
ここで我慢できるかどうか、ハリネズミを慣らすために重要なポイントです。
お迎え直後に、好奇心を持ってウロウロしていたら、「この子は怒らない子なのかな?もう慣れてるのかな?」と思い触ってしまうことも多いでしょう。
でもこの時ハリネズミは何が敵で、どこが安心できる場所か見定めているのです。
もし不慣れな飼い主が無理に触ろうとしてハリネズミを怖がらせてしまったら、飼い主のことを敵だと思うかもしれません。
そうして飼い主の匂いがする布切れが入っている小屋を怖がり、小屋に入ることすらしなくなった。という例もあります。

お迎え直後は、小屋の中、ケージの中が安心できる場所だということを知ってもらう期間(お迎えから3日間)です。
できる限りケージに近づかず、物音を立てず、人間や他の動物の気配を感じさせないこと。最適な温度を維持すること。そしてエサと飲み水を切らさないこと。これがポイントです。
エサと飲み水は、1日1回、お世話をする時間を決めて取り替えます。エサ入れや水入れ(又は給水ボトル)を取り替える作業以外は、一切行わないでください。
この時以外はエサや飲み水の管理をする必要はありません。健康管理の必要もありません。取り替えたエサや水が減っているか、で判断してください。不安があれば販売元に相談してください。

慣らし方のルール

慣らす時間は夜

ハリネズミは夜行性ですから、慣らす時間は夜にしましょう。ハリネズミが落ち着いた気分でいられるよう、ある程度の食事をあげてからがいいでしょう。*夜でも寝ていることもあるので、必ず起きてから慣らしましょう。

いつも同じにおいに

ハリネズミの嗅覚は大変優れており、外敵やえさなどをにおいで判別してます。
なので、あるときは石鹸のにおい、あるときは香水のにおいと毎回違うにおいだと、ハリネズミが混乱してしまいます。
飼い主さんのにおいはいつも同じにしてください。よく手を洗い、香りのあるものを身につけないようにしましょう。

においと良いことを関連づける

「飼い主さんのにおい」=「ハリネズミにとって良いこと」と関連づけることが大きなポイントです。

安心して眠れることはハリネズミにとて良いことですから、寝床に飼い主さんのにおいがついたものを入れておきましょう。
海外では、「飼い主さんが2日間着たTシャツを寝床に入れる」という方法が紹介されています。「飼い主さんのにおい」=「安心」と関連づけられます。

また、特に効果があるのはハリネズミの好物を使った方法です。
動物は、怖いことはせず、おいしいものをくれる人を信頼します。手のにおいを嗅がせた後で好物を与えましょう。
これで「飼い主さんのにおい」=「おいしいものをくれるにおい」と関連づけられます。
*直接、手で好物を与えると噛み癖が出ることもあります。好物を上げるときはスプーンかはしで与えてください。

驚かさないこと

動物は「いいことがある」という経験を忘れないこと以上に、「怖い」経験を忘れないものです。
怖いものに近づかないないのは生き物としての本能ですから仕方ありません。
ハリネズミに対して、急に大きな声を出したり、叩くなど、ハリネズミを怖がらせたり、驚かすようなことは決してしないでください。
飼い主さんのにおい・声=「怖いもの」と関連づけられ、慣れるのに時間がかかります。また、慣れているからと言って油断は禁物です。
嫌なこと・怖いことをされれば、慣れていても急に威嚇され、信頼を失うこともあります。本来、神経質で臆病な動物ですから、優しく接してあげてください。

慣らす手順の一例

①ハリネズミの反応を見る

飼育施設に手を入れた時、丸くなったり、威嚇、寝床に逃げ込んだりせずに、においを嗅ぎに来るなどの反応が見られるようになってから、積極的に慣らしはじめましょう。
水槽・衣装ケースで飼育している場合、真上からいきなり手を入れると驚き威嚇されるので、ハリネズミと少し離れたところに手を入れ、反応を見ましょう。

②好物をあげる

次にハリネズミの好物をあげてみましょう(肥満防止のため少量で)。好物に反応を示したら、自分のにおいを嗅がせ、与えます。
その後も、好物を欲しがるようでしたら、同じ手順で与えます。
その時、少し針を撫でてみましょう。嫌がるようだったら、すぐにやめてください。
食べ終わって、寝床に戻るようなら、そっとしておいてあげましょう。
嫌がらないようであれば、顎の下や針を触って、撫でてあげてみてください。

③スキンシップは短時間で

スキンシップは短時間が好ましいです。
最初は5分程のスキンシップからはじめて、徐々に時間を増やしていくのが良いです。
また、常にスキンシップできるとは限りません。好物を示しても寝床から出て来ないときは、無理に引っ張り出したりせず、そっとしときましょう。
寝床はハリネズミにとって安心できる場所です。そこで寝ている時に、無理矢理引っ張り出すのは、安心できる場所を失うことになります。
必ず、寝床から出ている時にしてください。

④抱き上げてみる

触られても警戒ななくなったら、次は抱き上げてみてください。
抱きあげたら、膝の上にのせ好物を与えましょう。
抱き上げる時、適切な持ち方をしないろ丸まったり、嫌がったりとスムーズにできません。
また、そうなればすぐケージに戻してあげましょう。

適切な持ち方

ハリネズミの体の左右に両手をそえて下からすくうように持ち上げます。
その際ハリネズミの死角からいきなり持ち上げると驚いてしまいます。
必ず、ハリネズミの後ろからではなく前から手を差し出し抱きかかえてください。
そのあとは膝の上にのせたり、片方の腕にのせ、もう片方の手をそえて体を支えてあげましょう。
飼い主さんが持ちやすく、ハリネズミが快適な持ち方をしてあげてください。
万が一、落としてしまった時に危なくないように、必ず低い位置に座って行いましょう。
ハリネズミは視力が良くないので、高い所にいても高低差がわからず、飛び降りることがあります。

気をつける点

慣れないうちは、ハリネズミ専用の皮手袋をを使いましょう。ただし、皮手袋ばかり使用していると飼い主さんの匂いではなく、皮手袋の匂いに慣れてしまいます。なので、皮手袋を使って持ち上げ、手に乗せる際は、皮手袋を外してください。
また、慣れていないハリネズミを持つ際、ハリネズミの体の真下に指が来るような持ちかかたをしないでください。
驚いて丸まった時に、指を引き込まれる危険があります。慣れているハリネズミでも急に触られるとびっくりしてしまいます。
優しく声をかけるなどして、必ずこちらの存在を認識させてから持ち上げてください。

また、ハリネズミと接した後は、良く手洗い・うがいをしましょう。

PAGE TOP