ハリネズミを買う/飼う

はじめまして。ハリネズミ飼育サイトHari Naviをご覧いただきありがとうございます。ハリネズミブリーダー兼、当サイトの管理人のcororiです。

ハリネズミは犬・猫と比べあまり手のかからず、サイズも手頃で可愛いことから、近年広く流通し、一般的なペットショップなどでも販売している所も増えています。とはいえ、安易に衝動的に購入するべきではありません。ハリネズミと長く、よりよい関係を築くには、飼い方の知識や飼育設備の用意など、事前の準備が大事です。

衝動買いも一つの出会いかもしれませんが、いったん踏みとどまって一度本当に飼えるのかどうか考えてください。ハリネズミを飼う前に必ず正しい飼い方の基礎知識を身につけて、飼育施設や環境をしっかり整えた上で飼ってください。特にハリネズミは、流通が増えているとはいえ、犬や猫のように一般的な動物ではありません。そのため、もしハズネズミの飼育に困った事が起きても、身近に頼れる人はなかなかいないでしょう。

また、増えてきているとはいえ、病気にかかった時、診察してくれる動物病院は多くありません。出来るだけ病気・怪我をしないよう、日頃の健康チェックをかかさず、しっかりと適した飼育の知識や環境を整えることが重要です。

そして、最も重要なことは、購入した後も飼い方の相談や問い合わせに答えてくれるような、アフターケアが充実している、信頼できるところで購入することです。販売者をよく比較して良い販売者を探しだすことも大事な事前準備です。

ハリネズミは懐く・懐かない?

少なくても、私のハリネズミは懐いています

「ハリネズミは神経質な動物であり、人間に懐かない観賞用のペットだ」などと言う人もいます。全く違います。ハリネズミ全てが人に懐かないという訳ではありません。一部の懐かないハリネズミを見ただけで、全てのハリネズミが懐かないと言うべきではありません。よいブリーダーから人慣れのトレーニングを受けたハリネズミを購入し、きちんと人に慣らせれば、手に乗ってくれたり、抱きかかえることもできます。飼い主さんの匂いや声を覚えることもできます。私が飼育しているハリネズミは、私がケージの前に立つと小屋から出てきてくれます。

筆者の主観ですが、10年前は素手ではさわれない個体が多かった印象ですが、ブリーダーの努力もあって懐く個体が増えてきたように思います。実際に筆者がブリーディングをしていた際も、何十匹の中から懐く見込みのある個体だけを仕入れ、実際に育てて健康・性格・顔つきのかわいさなど総合的に良い個体をブリーディングに供していました。

もちろん、ハリネズミにも個性や育った環境の違いがあります。よく懐かない子もいれば、慣らす努力など一切なしに慣れている子もいます。買ってきたハリネズミが懐かなかったとしても、それを個性として受け止めることが必要です。あえて厳しく言いますが、それができない人はハリネズミを購入すべきではありません。

身勝手な飼い主

「余所で買ったハリネズミが懐かなかったから、この要らないハリネズミを引き取って下さい。そして、新しい懐くハリネズミを下さい」こんなことを言う方がいました。筆者は単純にハリネズミが大好きで、皆様により健康で人慣れし、愛らしいハリネズミをお届けしたい一心でハリネズミの繁殖・販売をしていました。ブリーダーという仕事をしている中で、このような身勝手で無責任な方と出会う時が一番辛かったです。ペットを愛する方なら同じ気持を持っていただけるのではないでしょうか?

当然ですが、この方には筆者のハリネズミを販売しませんでしたが、今飼っているハリネズミを捨てるような事になってはいけないと思い、「懐かない要らないハリネズミ」を直ちに引き取りました。引き取ってみると、水もエサもろくに与えられておらず衰弱していました。けれども、すぐに持ち直して、最後まで筆者のところで元気に暮らしました。持ち直してみると性格もよかったですが、ブリーディングには使用しませんでした。

すでに捨てハリネズミが野生化している

ヨツユビハリネズミじゃないハリネズミ

ペットとして現在一般的なハリネズミといえばヨツユビハリネズミですが、以前はナミハリネズミ、マンシュウハリネズミなども飼われていました。しかし、マンシュウハリネズミが日本でも野生化し定着してしまいました。神奈川県小田原市(ナミハリネズミもいる?と言われています)、静岡県伊東市などで見つかっているとのことです。日本に生息していなかったハリネズミがいきなり野生下で現れる原因はなんでしょうか。飼育していた人が身勝手に捨てた。これしかないと言ってもいいでしょう。

これをうけて2005年、政府はマンシュウハリネズミ、ナミハリネズミなどを含む、エリナケウス属を特定外来生物に指定しました。外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)によって、これらの販売・飼育はもとより、生きたままの移動が禁じられました。違反した場合、個人には3年以下の懲役や300万円以下の罰金となります。

法規制は必要か不要か

さて、その当時、指定されたハリネズミを飼っていた人はどうすればいいのでしょうか?

2005年12月14日に指定、2006年2月1日に施行ですから、猶予は無きに等しいです。そのまま飼育することは許されると明言されるようになったのは2023年のミドリガメなどの「条件付特定外来生物」からです。このハリネズミの際は特に何の政令もなかったように記憶しています。私は指定されたハリネズミを飼育しておりませんでしたが、身勝手な飼い主が引き起こした問題によって、しっかり飼っている飼い主や罪のない動物が犠牲になることに憤りを感じます。

外来生物法や政府が悪い、そんな法律は必要ない、と思うのは仕方ないことだと思います。私も得心いたしかねますが、残念ながら、在来の生態系を守るために必要な法律です。ハリネズミの例でいうと、同じく虫を主食とする在来のもぐらの生態に影響するとのことです。また、静岡県伊東市ではイチゴが被害にあったとのことです。このように、生態や産業に被害があるのであれば、法律による規制もやむを得ないのでしょう。悪いのは間違いなく身勝手な飼い主です。ハリネズミに限らず、そういう人が、かけがえのないペットの生命を消費し、ペットを愛する人の心を引き裂くのです。

最後のハリネズミ ヨツユビハリネズミ

そこで特定外来生物に指定されなかったヨツユビハリネズミ(メセキヌス属)がペット業界で普及しました。そうして現在ではハリネズミ=ヨツユビハリネズミとなりました。特定外来生物に指定されなかったハリネズミはヨツユビハリネズミだけではありませんが、その他の属やメセキヌス属のヨツユビハリネズミ以外は未判定外来生物とされております。

実質的に飼育できるハリネズミはヨツユビハリネズミ以外にないと言っていいでしょう。それでも、ヨツユビハリネズミが普及するにつれて、ハリネズミを捨てる人は増え、跡を絶ちません。公園で保護されたりする事例が数多く報告されています。ヨツユビハリネズミは冬に弱いため本州で野生化するのは難しく、外来種指定される可能性は低いと言われています。けれども、沖縄でなら冬を超えて野生化してしまうかもしれないので、外来種指定される可能性はゼロではないと考えています。

「身勝手な飼い主や悪質なペット業者を少しでも無くし、一匹でも多くのハリネズミが幸せに暮らせるようにする」これだけのためにハリネズミブリーダーを始めました。たくさんの心優しい飼い主様と出会い、様々な方が私の育てたハリネズミをかわいがってくださる。そういう経験のたびに初心を思い出し決意を新たにします。

飼い主としてのマナー = 責任

確かにハリネズミの体は小さいです。けれども、どんな小さな生き物であっても、命は尊いのです。その生命を預かる責任はとても大きいのです。ハリネズミに限らず、どんなペットにも言えることですが、もし飼育するのならば、愛情と責任を持ち、幸せな一生を全うできるよう、適切な飼い方で育て、可愛がってあげてください。

こうして長い文章で書いてしまうと、非常に難しく感じてしまわれるかもしれませんが、簡単なことです。飼い方の勉強が必要といっても、飼う前に一度すれば済むことです。飼育施設やエサ、消耗品のお金も、犬や猫に比べれば、圧倒的に安いです。日頃の世話も簡単です。1日30分もあれば終わるのではないでしょうか。

そして何より、ただ愛してあげるだけです。見返りを求めず可愛がり、責任を持って小さな生命を大事に扱う。どんなペットでも同じことだと思います。自分がハリネズミに対して、これができるかどうか、今一度考えてみて下さい。これさえできれば立派な飼い主になれます。

それでは、長文に最後までお付き合いいただきありがとうございます。皆様のよりよいハリネズミとの暮らしの一助となれば幸いです。