繁殖の注意点

繁殖の注意点

ハリネズミに限らず、命の誕生を身近で見れるのは、非常に感動的な体験です。
飼っているうちに、この子の遺伝子を残したい、違うカラーの子が見てみたいなど、いろいろな理由で繁殖に挑戦したくなる飼い主は多いと思います。
しかし、妊娠・子育て中のハリネズミは普段とは打って変わって神経質になります。
ハリネズミにとってのストレスや身体的なダメージもさることながら、飼い主へのストレスも計り知れません。
慣れていた子が妊娠中は威嚇をして触れない、近づくだけで怒る状態になります。自分のミスで赤ちゃんの生命に関わるので、(特に繁殖が初めての)飼い主の心労は絶えません。
繁殖には相応のリスクを伴うことをしっかり把握しておいてください。

命への責任

赤ちゃんへの責任

ハリネズミは、一度に平均すると3~4匹の赤ちゃんを産みますが、11匹産まれたという例もあります。
もし多くの赤ちゃんが生まれたとして、全ての子供たちを良い環境で飼育するだけの用意はありますか?

ハリネズミは単独飼育が原則ですから、飼育施設は産まれた数だけ増えます。
置き場所、世話に掛かる時間、飼育にかかる費用(エサ、床材などの費用)なども増えてしまいます。
また1匹が病気に感染すると、他のハリネズミに感染するリスクもあるので、全員を病院に診せるとなれば高額な医療費になるリスクもあります。
何匹生まれたとしても終生飼育、寿命を全うするまで飼いきる覚悟が必要です。小さくても大切な大切な命です。生まれてくる命に対して責任を持ちましょう。

もし予定より多く生まれた場合、里親募集をして里子に出すという手もあります。現在はネットがありますから、里親募集をすれば里親の希望者はすぐに見つかります。
けれども、里子に出すハリネズミに対する責任として、里親を希望する人が本当にその子をしっかり責任をもって飼育してくれる人かどうか、見極める義務があると言っていいでしょう。
これからハリネズミを飼育する方へのメッセージ」のページでも私の意見を言っておりますが、残念なことにハリネズミを飼おうとする人の全てが「良い飼い主」ではありません。
「懐かない」という理由だけでハリネズミを捨てる人は跡を絶ちません。一般的に販売されているヨツユビハリネズミとは違いますが、マンシュウハリネズミ、ナミハリネズミが国内で野生化しているという問題もあります。
ヨツユビハリネズミであっても、公園などで保護される事例が多くあります。

要するに、里親募集をして他人にベビーのハリネズミをゆずるった後、万が一、その里親が身勝手にハリネズミを捨てたり、適切な飼育をしなかった場合のことを考えないといけません。
そういう人の元にベビーのハリネズミを渡さないようにする責任があるのではないでしょうか?

どこまで責任を感じ、責任を持つかは人それぞれ、価値観の問題でしょうから、一概に決め付けるわけにはいきませんが、繁殖の前に一度ゆっくり考えていただきたいのです。
「ペットを飼う人に悪い人はいない」確かにその通りですが、中には例外的な人もいることを忘れてはいけません。

母親ハリネズミへの責任

子供を産み、育てることは母親ハリネズミにとって、命がけの行動です。
最悪、出産直後に死んでしまう可能性もあります。
体に大きな負担がかかる行為なので、母親となるハリネズミが妊娠・出産・子育てに耐えうる体力があるかどうかを良く見極める必要があります。
出産・子育ての疲労は計り知れません。繁殖で栄養状態が悪化して毛並みや針ツヤが目に見えて悪くなることも多いです。

無事に出産出来たとしても、子供を外敵から守るため常に神経を尖らせて生活しなければなりません。
また、初めて出産するハリネズミであれば、子供の扱いに戸惑いパニックになってしまいがちです。子食いや育児放棄に繋がりやすいです。
そうした時、赤ちゃんがかわいそうというのも当然ありますが、加えて、母親ハリネズミに辛い経験をさせてしまったと後悔します。
(ハリネズミにそこまで高度な感情があるのかどうかの問題ではなく、私はそう思ってしまいます)

子食い・育児放棄の可能性

母親ハリネズミがその環境が子育てに向いていないと判断した時、赤ちゃんが奇形、虚弱で生きられないだろうと母親が判断した時に、育児放棄をしたり子食い(子供を殺して食べること)をしてしまう可能性があります。
これはハリネズミだけではなく、多くの動物で見られる自然の摂理です。

育児放棄をした場合、飼い主さんの人工保育で命が助かる場合もありますが、2時間おきの授乳をしなければならない上、残念なことに、丈夫に育つ確率はかなり低く、短命です。
だから人工保育を諦めろ、と言っているのではなく、育児放棄のリスクの大きさを忘れないで欲しいということです。

子食いは、飼い主さんにとって大変ショッキングな事態です。しかし、生き延びれない子を育てるのにエネルギーを使うより、健康に育つ子に栄養を回すというのがハリネズミの本能です。
自然の本能ですから、私たち人間には考えられないことかもしれませんが、しっかり理解して受け入れるべきです。

普通、生後2週間が経てば子食いする危険性は無くなりますが、もっと遅くに起きる可能性もあるので、気を抜くことはできません。

子食い・育児放棄は環境的要因で起こることがほとんどです。自分のミスが赤ちゃんの命を奪う事に繋がりかねないのですから、環境を整えるべき飼育者は、多大な責任を負うのです。
最悪の事態が起こったとしても、受け入れることができるのかどうか、一度ゆっくりよく考えてから繁殖に臨んでください。

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